点群判定ツール(分子の対称性)
概要:SMILESを入力するか代表的な分子を選ぶと、点群、対称要素、位数、キラリティ、極性、指標表がわかり、すべての回転軸と鏡映面が3Dで表示されます。無料でWebブラウザ上で動作し、ダウンロードは不要です。
分子の3D形状を組み立て、すべての回転軸、鏡映面、対称心、回映軸を見つけて、点群をシェーンフリース記号で示します。
ドラッグで回転、ピンチまたはスクロールでズーム。色:C2 青緑、C3 琥珀、C4 紫、C5 ローズ、C6 青、σh 緑、σv 藍、σd ピンク、対称心 オレンジ。
点群判定ツールの使い方
- H2OやBF3などのギャラリーボタンを押すか、一覧から分子を選ぶか、
O、c1ccccc1、Cl/C=C/ClのようなSMILES文字列を入力します。 - 点群、その位数、分子がキラルか・極性かを確認します。
- 3Dモデルを回転させます。回転軸、鏡映面、対称心、Sn軸が色付きで表示されます。一覧の要素にカーソルを合わせると強調表示されます。
- 群にたどり着くまでのはい/いいえの手順をたどり、指標表を確認します。
SMILESの場合、MolDrawの構造エンジンが水素を付加し、複数の3D形状を組み立てて構造最適化し、最もエネルギーの低いものを採用します。柔軟な分子はその形で判定されます(エタンはねじれ形になります)。ギャラリーの分子は理想的な厳密な形状を使います。わずかなゆがみは許容誤差の範囲内で平均化されます。
対称要素と対称操作
対称操作とは、操作後も分子がまったく同じに見えるように分子を動かす操作です。対称要素とは、その操作が用いる点、直線、平面のことです。1つの要素から複数の操作が生じることがあります。C3軸からはC3とC32が生じます。
| 記号 | 対称要素 | 対称操作 | 例 |
|---|---|---|---|
| E | 恒等 | 何もしない。すべての分子が持つ。 | すべての分子 |
| Cn | 回転軸(真軸) | 360°/n回転する。nが最大の軸が主軸。 | H2OのC2、NH3のC3、ベンゼンのC6 |
| σ | 鏡映面 | 面に関して鏡映する。σhは主軸に垂直、σvとσdは主軸を含む。 | BF3のσh、NH3のσv、アレンのσd |
| i | 対称心(反転中心) | すべての原子を中心を通して反対側へ移す。 | SF6、CO2、trans-1,2-ジクロロエテン |
| Sn | 回映軸 | 360°/n回転した後、それに垂直な面で鏡映する。S1 = σ、S2 = i。 | CH4とアレンのS4、ねじれ形エタンのS6 |
点群のフローチャート
- 分子は直線形か?はい:対称心があればD∞h(CO2、H–C≡C–H)、なければC∞v(HCl、HCN)。
- n ≥ 3の軸が複数あるか?はい:高対称の群です。C3軸が4本でC4がなければ正四面体形のTd(CH4)。C4軸が3本なら正八面体形のOh(SF6)。C5軸が6本なら正二十面体形のIh(C60)。鏡映面がなければT、O、Iになります。
- 回転軸Cnはあるか?いいえ:鏡映面があればCs、対称心があればCi、何もなければC1。
- 主軸Cnを見つける。それに垂直なC2軸がn本あるか?
- はい(D群):σhがあれば → Dnh、なければn枚のσd面があれば → Dnd、それもなければDn。
- いいえ(C群とS群):σhがあれば → Cnh、なければn枚のσv面があれば → Cnv、なければS2n軸があれば → S2n、それもなければCn。
各分子についてツールがたどった経路は「群の求め方」に表示されます。
主な点群の早見表
| 点群 | 対称要素 | 位数 | 例 |
|---|---|---|---|
| C1 | E | 1 | CHFClBr |
| Cs | E, σ | 2 | HOCl, CH3OH |
| C2 | E, C2 | 2 | H2O2 |
| C2v | E, C2, 2σv | 4 | H2O、SO2、CH2Cl2、cis-1,2-ジクロロエテン |
| C3v | E, C3, 3σv | 6 | NH3、CHCl3、PCl3 |
| C2h | E, C2, σh, i | 4 | trans-1,2-ジクロロエテン、trans-N2F2 |
| D2h | E, 3C2, 3σ, i | 8 | エテン、ナフタレン、ジボラン |
| D3h | E, C3, 3C2, σh, S3, 3σv | 12 | BF3、PCl5、重なり形エタン、シクロプロパン |
| D4h | E, C4, 4C2, σh, 4σ, i, S4 | 16 | XeF4、[PtCl4]2− |
| D6h | E, C6, 6C2, σh, 6σ, i, S6, S3 | 24 | ベンゼン |
| D2d | E, S4, 3C2, 2σd | 8 | アレン |
| D3d | E, C3, 3C2, 3σd, i, S6 | 12 | ねじれ形エタン、いす形シクロヘキサン |
| Td | E, 4C3, 3C2, 3S4, 6σd | 24 | CH4、CCl4、P4 |
| Oh | E, 3C4, 4C3, 6C2, 9σ, i, S4, S6 | 48 | SF6、キュバン |
| C∞v | E, C∞, ∞σv | ∞ | HCl、HCN、OCS |
| D∞h | E, C∞, ∞C2, ∞σv, σh, i | ∞ | CO2、H2、エチン |
キラリティ、極性、指標表
キラリティ
回映軸を持たない分子、つまり鏡映面も対称心もSnも持たない分子はキラルです。該当するのはC1、Cn、Dn、T、O、Iの群だけです。CHFClBr(C1)とH2O2(C2)はキラルです。S4軸だけを持つ分子は、鏡映面がなくてもキラルではありません。不斉中心にRとSを帰属するにはR/S キラリティ判定を使ってください。
極性
双極子モーメントは、どの操作の後も同じ向きを指していなければなりません。それが可能なのはC1、Cs、Cn、Cnv(C∞vを含む)だけです。水(C2v)とアンモニア(C3v)は極性分子で、CO2、BF3、CH4、SF6、trans-1,2-ジクロロエテンは無極性分子です。
指標表の読み方
各列は操作の類で、たとえば2C3(C3とC32の回転)です。各行は既約表現です。その指標は、軌道や振動が各操作でどう振る舞うかを示します。1は変化しないこと、−1は符号が反転することを意味します。マリケン記号:AとBは1次元(Aは主軸に関して対称、Bは非対称)、Eは2次元、Tは3次元です。gとuは反転に関して対称か反対称か、′と″はσhに関して対称か反対称かを表します。最後の2列は、x、y、z、回転Rx、Ry、Rz、二次関数(x2、xyなど)がどこに属するかを示します。これらの列から、どの振動がIR活性(x、y、z)か、ラマン活性(二次関数)かがわかります。
例題
水、H2O
折れ線形で直線形ではない。Oを通るC2軸が1本。垂直なC2もσhもないが、σv面が2枚ある。
C2v、位数4、極性あり、キラルではない
アンモニア、NH3
Nを通るC3軸。垂直なC2もσhもなく、それぞれ1本のN–H結合を含むσv面が3枚。
C3v、位数6、極性あり
三フッ化ホウ素、BF3
C3軸、B–F結合に沿ったC2軸3本、分子平面がσh。
D3h、位数12、無極性
メタン、CH4
C3軸4本(各C–H結合に沿って1本ずつ)、S4軸3本、σd面6枚、対称心なし。
Td、位数24、無極性
trans-およびcis-1,2-ジクロロエテン
トランス体:平面に垂直なC2、平面がσh、さらにi。シス体:平面内のC2とσv2枚。
トランス体C2h(無極性)、シス体C2v(極性)
エタン:ねじれ形と重なり形
どちらもC3軸と、それに垂直なC2軸3本を持つ。ねじれ形はiとσd3枚、重なり形はσhを持つ。
ねじれ形D3d、重なり形D3h
アレン、H2C=C=CH2
2つのCH2平面は互いに90°。主軸はS4(C2を含む)、垂直なC2軸2本、σd2枚。
D2d、位数8
CHFClBr
炭素のまわりに4種類の異なる原子。軸も面も対称心もない。
C1、キラルで極性あり
よくある間違い
- 平面的な図から考える。点群には3Dの形が必要です。シクロヘキサンはいす形ではD6hではなくD3dです。ねじれ形と重なり形のエタンも異なります。
- Sn軸を見落とす。CH4とアレンはどちらもS4軸を持ちます。これを見落とすと誤った群を選んでしまいます。
- σvとσdを混同する。D群では、垂直な2本のC2軸を二等分する面がσdです。
- 誤った主軸を選ぶ。主軸はnが最大の軸です。XeF4では、平面内のC2ではなく、平面に垂直なC4軸が主軸です。
- 操作ではなく要素を数える。位数は操作の数です。C3軸からは2つの操作(C3とC32)が生じます。
- 非共有電子対が対称性に加わると考える。数えるのは原子の位置だけですが、非共有電子対は形状を決めます。NH3は平面形ではなく三角錐形(C3v)です。
もっと大きな分子を調べたいですか?MolDrawエディターで描いて「対称性」パネルを開くと、各操作を3Dで再生できます。
MolDrawエディターを開くよくある質問
水の点群は何ですか?
水はC2vです。恒等操作E、酸素を通るC2軸1本、鏡映面2枚(うち1枚は分子平面)を持ちます。操作は4つなので、位数は4です。
分子の点群はどうやって求めますか?
フローチャートを使います。分子は直線形か?高次の回転軸を複数持つか(Td、Oh、Ih)?そうでなければ、最も次数の高い回転軸Cnを探します。それに垂直なC2軸がn本あるか(D群)、次に水平鏡映面があるか(DnhまたはCnh)、次に垂直鏡映面か二面鏡映面があるか(CnvまたはDnd)を調べます。回転軸がまったくなければ、鏡映面(Cs)か対称心(Ci)を探し、どちらもなければC1です。
σvとσdの違いは何ですか?
どちらも主軸を含む鏡映面です。二面鏡映面(σd)は、主軸に垂直な2本のC2軸のなす角を二等分する面、または2枚のσv面の間にある面です。それらのC2軸を含む面や、Cnv分子で外側の原子を含む面はσvと表します。
対称性から分子がキラルかどうかはどうわかりますか?
回映軸を持たない分子、つまり鏡映面も対称心もSn軸も持たない分子はキラルです。したがって、キラルになりうるのはC1、Cn、Dn、T、O、Iの群に属する分子だけです。CHFClBr(C1)とH2O2(C2)はキラルで、水(C2v)はキラルではありません。
双極子モーメントを持ちうる点群はどれですか?
極性を持ちうるのは、C1、Cs、Cn、Cnv(直線形のC∞v群を含む)の分子だけです。それ以外の群では、対称操作によって双極子が打ち消されます。そのため、水(C2v)とアンモニア(C3v)は極性分子ですが、CO2(D∞h)、BF3(D3h)、CH4(Td)は無極性分子です。
点群の位数とは何ですか?
位数は、恒等操作を含めた群の対称操作の数です。C2vの位数は4(E、C2、σv、σv′)、C3vは6、Tdは24、Ohは48です。直線形分子の群の位数は無限大です。
ねじれ形と重なり形のエタンで点群が異なるのはなぜですか?
点群は3Dの形を表します。ねじれ形エタンは対称心と二面鏡映面を持つのでD3dです。重なり形エタンは代わりに水平鏡映面を持つのでD3hです。SMILESを入力すると、ツールは最もエネルギーの低い形を組み立てます。エタンの場合はねじれ形です。
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